再会は甘い恋のはじまり…とはかぎりません!(おまけ追加しました)
祥は久しぶりの我が家でボーっとしていた。
三日間も快適なホテル暮らしをしてしまったので、帰宅後の洗濯や食事の支度で異様に疲れた。
全部こなした今は放心状態。贅沢に慣れると後が怖いということを身に染みて実感中なのだ。
つむぎは四日ぶりの家なのに喜ぶことなく、「おじちゃんのお部屋はおおきかったね」と寂しそうに言い、元気のないまま眠りに着いた。
つむぎに楽しい思い出を、と思っていたのに、反って寂しい思いをさせることになってしまったようで少し辛い。
祥の方はというと、健斗の話を聞いてから丸一日が経った今も、まだ気持ちの整理はついていない。
昨夜、祥が答えに困っていた時、つむぎが珍しく夜泣きをした。
張り詰めた空気が一瞬で途切れ、健斗は「聞きたいことはその二点だ。返事を待ってる」と言って、祥をつむぎの元に行かせたのだ。
一度寝ると滅多に起きないつむぎが泣き出したのは、混乱する祥を助けるためだったのかもしれない。
それぐらい絶妙なタイミングだった。
朝、健斗の部屋から出勤するときも、つむぎが健斗と別れることを嫌がってぐずったので、話をする間もなかった。
つむぎをなだめすかし、託児ルームに預けたとき、正直助かったとホッとしたのだ。
健斗の話を聞いて、祥の気持ちが大きく変化したのは事実だ。わだかまりは消えたと言っていい。
この四年間、祥が大変な日々を過ごしてきたのは事実だけど、健斗も苦労した。
事故が起きたのも、記憶をなくしたのも、健斗が悪い訳じゃない。
だから、今までのことは水に流しましょという気持ちに落ち着いた。
問題は、健斗に全て話すかどうかということだ。
確かに健斗は一年で帰ってくると言った。帰ってきたら一緒に住もうと。
でも、つむぎの存在は健斗にとっては想定外の出来事だ。子どもを産んだのは祥の一存なのだから。
全てのことを話したら、健斗はどうするのだろう。
責任を取ってつむぎを認知する?
もしくは、祥のことも責任を取って結婚すると言い出すのだろうか。
それが怖い。