再会は甘い恋のはじまり…とはかぎりません!(おまけ追加しました)
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ハロウィンの日が来た。
泉ホテルでは飾り物などは控えめにしているが、毎年全てのスタッフがお客様に渡すお菓子を携帯し、『Trick or treat』に対応できるようにしている。
祥はコンシェルジュカウンターにいるので、多くのお客様に声をかけられる。
小さな子どものお客様が恥ずかしそうに「Trick or treat」と言うのは見ていても可愛い。
祥は喜んでお菓子を渡しながら、このイベントを久しぶりに楽しんでいた。
健斗とはその後全く会っていない。
莉子さんによると、健斗の患者の手術は無事に終わったそうだ。
術後の管理は健斗がしているようなので、病院に詰めて頑張っているんだろう。
ホテル内でも見かけることがなかった。
健斗の大きな仕事の前に、全て終わらせることができてよかったと思う。
今は何の気がかりもなく、仕事に打ち込めているはずだ。
健斗に何を伝えるべきか悩んだ祥だったが、結局はあの女の子が決め手になった。
健斗にはもう大事にしている存在がいるのだ。
全幅の信頼を寄せて健斗を見上げる彼女は、昔の祥と重なった。
祥もあんな風に健斗しか眼に入らず、健斗だけを見つめていた時期があった。
その彼女を見つめる健斗の柔らかい眼差し。
あの眼で見つめられていたことがある祥にはわかる。
健斗とあの子は、あの頃の健斗と祥なのだ。
祥とつむぎに責任を感じる必要などない。今の幸せを大事にしてほしい。
祥はそう思うことにした。
祥には愛する娘がいて、やりがいのある仕事がある。
それだけで十分。
祥はちゃんと前を向いて歩き始めていた。