再会は甘い恋のはじまり…とはかぎりません!(おまけ追加しました)

「小林さん、ちょっといい?」

マネージャーから声がかかった。

「はい、なんでしょうか」

「ラウンジの吉岡さん、お子さんが発熱したんだって。午後からラウンジに回ってもらってもいい?」

「もちろんです。承知いたしました」

吉岡さんは、祥の託児の先輩だ。
つむぎと同じ歳の子どもがいるが、上にお兄ちゃんがいるので、子育て経験も豊富。
いろいろと相談に乗ってくれる頼れる人なのだ。

つむぎもひどい風邪をひいたが、託児ルームでは季節の変わり目で発熱する子が相次いでいる。

こんな時はみんなでカバー。祥もあっちこっちに駆り出される日が続いていた。

喫茶店のホール係をしていた祥には、ラウンジの仕事は慣れたものだ。

張り切ってラウンジに向かった。


「パンプキンプリンのサービス?」
「そう。今日はハロウィンだから、パンプキンプリンをサービスしてるんだ」

ラウンジのチーフから説明を受けて驚いた。
飲み物を注文してくれたお客様には、プリンをサービスすると言うのだ。

「毎年そんなことしてます?」
「去年はかぼちゃのクッキー、その前はかぼちゃのミニタルト。毎年出すものは変わるけど、サービスしてるよ」

知らなかったの?と呆れられる。

知らなかった。
ラウンジでそんなサービスをしてたなんて。
コンシェルジュとしては失格だ。
ハロウィンに背中を向けながら生きていたせいだと反省する。

そう言えば、『珈琲』では今年もパンプキンプリンを出しているんだろうか。
健斗とデートのきっかけになった出来事だが、思い出してももう辛くない。

帰りに寄ってみようかな。もうプリンは残ってないかもしれないけど。
そんなことを考えて、フフッと笑った。


< 111 / 135 >

この作品をシェア

pagetop