再会は甘い恋のはじまり…とはかぎりません!(おまけ追加しました)
「し、少々お待ちください」
慌てて奥に戻り、プリン一つ、と注文を通す。
ドキドキする胸を押さえ、深呼吸をした。
深い意味などあるはずないのに、祥は動揺した。
落ち着こう。
健斗は覚えていないのだから。
祥はヨシっと気合を入れると、プリンを持って三番テーブルに戻った。
「どうぞお召し上がり下さい」
そう言いながら、プリンを置く。
「You say too」
「えっ?」
祥は驚いて健斗を見た。
「You say too」
繰り返されるフレーズに、祥は困惑する。
健斗は根気強くもう一度問いかけ、祥は「Trick or treat」と小さな声で答えた。
「はい。僕のゼミの先生が、医療監修として関わった映画なんだ。一緒にどうかな?」
祥は息を呑んだ。
「祥、ごめん。本当にごめん。一番大事なものはキミだったのに」
健斗の顔が悔しそうに歪み、祥の手をそっと取った。
「思い出した。サービスのプリンをくれた時に、勇気を出してキミを誘ったんだ。ずっと声をかけたくて、でもなかなかうまくいかなくて。キミが『うん』と言ってくれたとき、俺は天に上るくらい嬉しかったんだ」
祥の見開いた眼から涙が静かに零れ落ちる。
健斗は祥の涙を掌でそっと拭き取って、「仕事が終わったら部屋に来て」と囁いた。