再会は甘い恋のはじまり…とはかぎりません!(おまけ追加しました)
終業後、祥はつむぎを連れて、健斗の部屋の前に立った。
言われるままに来てみたのはいいが、なかなかインターフォンを押す勇気が出ない。
「つむが押す!」
一生懸命背伸びをしてインターフォンを押そうとするつむぎを抱き上げると、つむぎは嬉しそうにボタンを押した。
ガチャっという音がして、扉が開かれる。
「おかえり」
にこやかに出迎える健斗に、つむぎは手を伸ばした。
「おじちゃん!」
祥の腕からつむぎを受け取ると、健斗は優しく訊ねる。
「元気にしてたか?」
「ウン!」
「入って」
促されて祥も部屋の中に足を踏み入れた。
前にもここに来たのに、空気が変わったような気がする。
居心地が悪そうに立ちすくむ祥に、健斗が笑いかけた。
「ソファーに座って。先に食事にしよう」
ルームサービスの食事をとる間も、食後くつろぐときも、つむぎはずっと健斗にまとわりつき、はしゃぎ続けていた。
「つむ、落ち着いて」
何度も声をかけたけれど、祥の言うことには耳も貸さない。
やれやれと思っていたら、疲れが急にきたようで、電池が切れたように健斗の膝の上で丸くなって寝てしまった。
「申し訳ございません。重いのに…」
「祥。俺は客の田中様じゃない。今は只の田中健斗として話してくれないか」
健斗は優しくつむぎの頭を撫でながら、祥を見た。
〝祥〟と呼ばれて、ビクッとする。
怯えた子猫のような反応をする祥に、健斗は優しく語りかけた。