再会は甘い恋のはじまり…とはかぎりません!(おまけ追加しました)

「『珈琲』に行ってから、頻繁に頭痛が起こるようになったんだ。記憶が戻りかけている気はしていたが、今日、ラウンジで祥がパンプキンプリンを運んでいるのを見たら、一気にいろんなことがなだれ込んできた。不思議なもんだな」

健斗の表情は穏やかで、楽しげだった。
祥が覚えている健斗の姿だ。
祥は眩しいものを見たかのように、眼を細めた。

「祥にデートを申し込んだハロウィンの日は、俺の生涯の中でも記念すべき日だった。今回記憶が戻るきっかけになったのもハロウィンだったのが、驚きでもあるし嬉しい気もするよ」

健斗の膝の上のつむぎが、居心地のいい場所を探すようにもぞもぞと動いた。

「寝かしてこよう」

健斗はつむぎを抱き上げると寝室に向かった。

ぐっすりだ、と笑いながら戻ってきた健斗は、ソファーに座らずに祥の前に跪いた。

「祥。改めて言わせてくれ。一年で帰ってくると約束したのに、守れなくてごめん。辛い思いをさせて本当に悪かった」

健斗の指がそっと祥の頬に触れた。

「つむぎは俺たちの娘だよな?」

祥が小さく頷くと、健斗は祥を抱きしめた。

「つむぎを産んで育ててくれてありがとう。一人で苦労させてごめん」

健斗の言葉に今までのことが次々と思い出される。

妊娠して途方に暮れたこと。
つむぎを産むときも、一人で頑張ったこと。
幼子を抱えて必死に働いてきたこと。

祥は耐え切れなくなってポロポロと涙をこぼした。
そんな祥を健斗はさらに強く抱きしめる。

健斗の腕の中は昔と変わらず暖かい。

本当に健斗は祥の元に帰ってきたのだろうか。
期待と戸惑いの狭間で祥は揺れていた。

「今さら何を言ってるんだと詰ってくれていい。気のすむまで殴ってもいい。でも、俺はきみとつむぎと一緒に生きていきたい。祥、きみを愛してる」

健斗の言葉が祥の戸惑いを押し流した。
衝動的に健斗の背中に手を回し抱きしめ返す。

「おかえりなさい健斗。会いたかった…」

ずっと言いたかった。
この四年間ずっと。

静かに涙をこぼす祥を、健斗はただ抱き締めていた。

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