再会は甘い恋のはじまり…とはかぎりません!(おまけ追加しました)
「クククッ」という笑い声が背後で聞こえる。
しまった!今日は憧れの君がもう来ていたのに!
背後をチラッと伺うと、彼が微かに揺れながら笑っている。
「おっ!お兄ちゃん、興味あるか?外国の人に人気なんやで。一枚どうや?」
「ありがとうございます。確かに外国人は漢字のプリントが好きですよね。でも、僕はこう見えて日本人なんです。友人に勧めておきますよ」
なんという人格者!
祥の冷たい対応とは雲泥の差だ。
現に宮本さんはたいそう喜び、「嬉しいなぁ。わしの店は東山にあるからぜひ来てな」と言って、名刺を渡していた。
相手を傷つけないように断り、なおかつ希望を与える。
大人の対応とはこういうものか。
祥は来月二十歳になる。大人の階段を上がる手始めに、宮本さんに優しくすることを目指そう。
でも、重要なのはそれではない。
国籍は日本なんだ…
新しく仕入れた情報を心の中にストックする。憧れの人に関することは、どんなことでも知りたいのがファン心理。
これは大きな新情報だわ、と祥は内心喜んだ。
祥の代わりに箱を取ってくれたあの日から、彼とは少しずつ話すようになっている。
本当に他愛のない話だけだけど。
お店にいるときに彼の電話が鳴り、「Hello…」と言いながら外に出て行くのを見たことがあったので、英語圏の国の人なんだなと思っていた。
そうか、日本の人なんだ…
少し距離が縮まった気がしたけど、日本人という括りだけで喜ぶのはおかしい。
それなら宮本さんも一緒なんだし。