再会は甘い恋のはじまり…とはかぎりません!(おまけ追加しました)
「わざわざ来ていただいて、ありがとうございます。まだあまり長く話せないんですけど、私の話を聞いてくれますか?」
そう前置きをして、栞さんは小さな声で話し出した。
「私、小さな頃から健ちゃんに憧れてました。幼なじみって言うには年が離れてるけど、健ちゃんのお嫁さんになるってずっと思い続けてたんです」
栞さんは、小さく息を吐いた。
「心臓外科医になるって聞いた時も、心臓が悪い私のために心臓外科を選んでくれたんだって嬉しかった。
でも、健ちゃんが大学を卒業してロンドンに帰って来たとき、祥さんの話を聞きました。まだ誰にも言ってないけど、大事な人ができたって。だから一年後に京都に戻るって…。
びっくりしました。ずっとそばにいてくれるもんだと思っていたから」
今度は長く息を吐く。
「大丈夫ですか?」
気遣うように聞くと、ハイと小さく返事が返ってきた。
栞さんが息を整えるのを静かに待つ。
病室の窓から差し込む陽射しが優しく栞さんを照らしていた。
「なんとかして健ちゃんを自分のものにしたいと思いました。誰にも渡すもんかって。
そんな時に事故が起こったんです。健ちゃんは祥さんのことを忘れてしまいました。田中のおじ様とおば様は何も聞いていなかったようで、私以外誰も祥さんのことを知る人はいなくなった…」