再会は甘い恋のはじまり…とはかぎりません!(おまけ追加しました)

「私、正直嬉しかったんです。健ちゃんの記憶がなくなったことが。
あまり笑わなくなって、別人のようになってしまったけど、健ちゃんが私のそばにいてくれるだけで満足でした。最低ですよね」

栞さんは自嘲するように笑った。

「でも、同時にどんどん苦しくなっていきました。健ちゃんの幸せを阻害しているのがわかっていたから。
だから健ちゃんの記憶が戻り、祥さんの事を思い出したと聞いた時、ホッとしました。あぁこれで罪の意識から開放されるって。
ずっと隠しててごめんなさい。私が祥さんのことを健ちゃんに話していたら、もっと早く二人は会えるはずだった。
長い間祥さんが苦しむことはなかったんです」

ごめんなさい。
栞さんは、すすり泣きながら小さな声で話を結んだ。

祥は思わず栞さんの手を取った。

「栞さんのせいじゃない!健斗と私はそういう巡り合わせだっただけです。うまく言えないけれど、あなたのせいじゃないことだけはわかります」

喚くように言ったあと、祥は栞さんの手をもう一度ギュッと握った。

祥の方がずっと年上なのに、支離滅裂だ。

でもこんなに華奢で今にも消えてしまいそうな栞さんが、心に抱えていた重荷をぽつぽつと話す姿は見ていられなかった。

たとえ祥の驕りだとしても、目の前の女の子を助けたい、ただその一心だ。

栞さんは祥の剣幕に驚いたようだが、クスクスと笑い出した。

< 123 / 135 >

この作品をシェア

pagetop