再会は甘い恋のはじまり…とはかぎりません!(おまけ追加しました)

「ほんとに健ちゃんの言ってたとおり。祥さんは素直で真っすぐで優しい人ですね。健ちゃんはそんな祥さんが大好きだって言ってました」

栞さんはフーっと長く息を吐くと、「健ちゃんには言えないままなのに、祥さんに先に話してしまってごめんなさい。私のこと許してもらえますか?」と静かに聞いた。

確かに驚きはしたが、栞さんを恨む気持ちはない。

誰しも自分の幸せを守りたいと思う。
それは本能的なものだ。

「私は栞さんから健斗を取り上げてしまって申し訳ないと思っていました。でも、もう思うのは止めにします。健斗と娘、三人で幸せになりますね。それでおあいこでいいですか?」

栞さんはコクっと頷くと、ありがとうございますと囁くようにいった。

「この話はここでおしまいにしましょう。健斗に話す必要はありません」
「いいんですか?」
栞さんは目を丸くして訊ねた。

「もちろんです!」
被せる勢いで言うと、「祥さんはほんといい人すぎますね」と栞さんは呟いた。

「私、病気が治ったら、やりたいことがたくさんあるんです。留学もしたいし、友だちと旅行にも行きたい。今までできなかったこと、ぜーんぶします。そして、健ちゃんより素敵な人と巡り合いたいです」

祥はうんうんと頷く。病気のせいで我慢してきたことが多いだろう。もちろん若くてキレイな栞さんは素敵な出会いもあるはすだ。

これからは思う存分人生を楽しんでほしい。心の底からそう願う。

< 124 / 135 >

この作品をシェア

pagetop