再会は甘い恋のはじまり…とはかぎりません!(おまけ追加しました)

「娘と孫をお願いします」

考えもしない一言だった。まさか父がそんなことを言うなんて。
信じられない思いで父を見つめる。

「ありがとうございます。必ず幸せにします」
健斗はもう一度深く頭を下げ、祥も慌てて一緒に頭を下げる。

つむぎまで「ありがとうございます!」と頭を下げるので、厳かな場が一気に笑いに包まれた。

母は涙ぐみながら、優しく祥の肩をさすってくれる。

「祥、よかったな」と、兄までしみじみと言うのが胸にきた。

「こんなに幸せでいいのかな」
「何言ってんだ。これからもっともっと幸せになれよ」

頭をグリグリと強く撫でられ、痛い痛いと泣き笑いした。

続く会食で、父は珍しく酔っぱらった。
お酒の席でも羽目を外すことのない父が、酔いつぶれて寝そうになっている姿なんて見たことがない。

「よほど嬉しかったのね。このまま寝かしてあげましょう。祥、毛布かけてあげて」

嬉しかった?こんなに酔うほど?

母の言葉を半信半疑で聞きながら、毛布をかけようとした。

すると父の口が微かに動き、「祥、幸せになれよ」という呟きが確かに聞こえた。

祥は歯をぐっと噛み締める。
危ない。危うく涙腺が崩壊しまうところだった。

じっくりと見る父の寝顔は、穏やかで微笑んでいるように見えた。

「大丈夫。お父さんの娘だもの」
寝息をたてる父にそっと囁く。

『ありがとう』

感謝の気持ちで毛布をかけた。


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