再会は甘い恋のはじまり…とはかぎりません!(おまけ追加しました)
祥は冷静になって、プリンの用意をした。
男性のお客様だと、いらないと言う人もいるけど、彼はどうだろうか。
「Please say 『Trick or Treat?』」
パンプキンプリンを見せながら話しかける。
「キミ、英語が話せるの?発音が綺麗だね」
彼は驚いたような顔をした。
短い文だけで、話せますと言うのはおこがましいが、ホテル勤務を目指しているので祥は英会話の勉強をずっと続けている。恥ずかしかったが、勇気を出して声をかけてみたのだ。
チョットだけという仕草をしてみせると、流暢な「Trick or Treat?」が返ってくる。
「Here you are!よろしければ、お召し上がりください」
プリンをテーブルに置くと、今度は彼が「You say too」と言った。
「え?」
祥が驚いて彼を見ると、
「You say too」
いたずらっ子のように笑いながら繰り返す。
「Trick or Treat?」
恐る恐る祥が聞くと、「ハイ」と言って一枚のチケットを渡された。
「僕のゼミの先生が、医療監修として関わった映画なんだ。一緒にどうかな?」
それは、今話題の医療映画のチケットだった。
「お医者様だったんですね…」
「まだ学生だよ。五年生」
祥はがっかりした気持ちを悟られないように笑顔を作った。
医学生と聞いて、よりによってと思わざるを得ない。祥は医者という職業の人が苦手なのだ。