再会は甘い恋のはじまり…とはかぎりません!(おまけ追加しました)
「交換研修があったら、私も手を挙げるから。くれぐれも頼むわよ」
にっこりと笑いながら麻季が圧をかけてくる。
でも、苦境なときほど祥は燃えるのだ。
数年後、泉ホテルに戻るときには、立派な姿を見せようと心に誓う。
麻季のためならさらに頑張れるというもの。
「任せて!必ず麻季にバトンタッチするから」
握りこぶしで宣言する祥に、麻季は笑いながら頷いた。
マスターや和子さんも自分の事のように喜んでくれたが、ロンドンに行くと言う祥を誰よりも喜んだのは実は宮本さんだ。
「しっかり宣伝して来てや。海外注文も受け付けるで」
まずは健斗の家族や友達にお土産と言って、宮本Tシャツをたくさん渡される。
うーん…
『満足』はいいとしても、『毛玉』『足汗』は憚られる。
お義父様は日本人なので、もちろん意味もわかるのだし。
最新のTシャツには『歯石』が加わっていたので、それも丁重にお断りした。
「相変わらず冷たいなぁ。『歯石』はなかなかの売れ筋なんやで」
ぶーぶー言う宮本さんをなだめ、祥は『満足』Tシャツだけをたくさん持って海を渡る。
毎日このTシャツを着ていたら、健斗はきっと笑うだろう。
でも、三人でこの言葉どおりに生きていけたら最高だ。
祥は未来を想像して、大満足で頷いた。
**おしまい**