再会は甘い恋のはじまり…とはかぎりません!(おまけ追加しました)

祥は指定された店の前に立っていた。
今日は人生初めてのデートの日。今は初めての待ち合わせ中なのだ。

今から起こること全てに『初めての』という言葉がつく。

お店のウインドウに映る自分を見ながら、祥はもう一度髪を撫でつけた。

いい記念になるから、と挑んだデートだったが、着るものはどうするの?というところでまず躓いた。

夏はTシャツ、春秋は長そでTシャツ、冬はセーターかトレーナー。
下は年がら年中スキニーのデニムで、靴はスニーカー一筋。

祥はずっとそんな恰好で過ごしてきたのだ。

大学の入学式に着たのは、就活でも使える黒のスーツ。
普段着よりもいい服はそれしかなく、まさか、それで行くわけにはいかないし…

丸ごと一式買うお金はないので、デニムに合わせられるような甘めのブラウスとバレーシューズを購入した。

祥は身長が高い分、足が長い。しかも、人に言わせるとすごく形がいいらしい。
自分では足だけがやけに目立つのですごく嫌なのだが、たいていの人にそれを褒められる。

でも、デニムパンツを履いていれば様になるみたいなので、そこだけはありがたい。

いつものデニムにちょっと女の子っぽいブラウス、ロングカーディガン。

祥にしては、大いに頑張った格好だ。

髪はムースをつけただけだが、軽い癖のあるショートなので、ふんわりとまとまっていた。

高校まではロングヘアがトレードマークだった。

「女の子は女の子らしく」という父の信条のもと、父に従順な母が髪を切ることを許さなかったのだ。

でも、京都に来てバッサリと切った。

今までの生活とはきれいさっぱりお別れ。やったー!

訳がわからない様子の美容師さんにもお願いして、一緒にバンザイをしてもらった。
それからはずっとショートのままだ。

< 17 / 135 >

この作品をシェア

pagetop