再会は甘い恋のはじまり…とはかぎりません!(おまけ追加しました)
お店のウインドウに映る姿をもう一度見る。
緊張している様子はない。もう自分をよく見せようという気がないので、気楽なものだ。
「ごめん!遅くなった」
健斗が息を弾ませながらやってきた。
「全然平気です。まだ待ち合わせの5分前じゃないですか」
「女の子を待たせるなんて最低だよ。しかも初デートなのに」
また『女の子』だ。しかも『初デート』って。
この人は、女の子をキュンとさせるツボを押さえた人なんだろう。
「私も今来たところなので平気です」
にっこりと微笑むと、健斗は照れたように頭を掻いた。
「こんなに可愛い子が人待ち顔で待ってたら、すぐに声をかけられてしまうよ。よかった、何事もなくて」
意外!!この人、こんな人なの?
真面目に本を読んでいるところしか見たことがなかったので驚きだ。
でも、シンデレラ気分。
初めて男の人に『可愛い』と言われた。
もうこんなことはないかもしれない。祥は初めてのデートを楽しむことにした。
ランチ、映画、ウインドウショッピング。
デート初心者にもわかりやすい内容で、祥が『デート』と聞いて思い浮かぶこと全てが詰め込まれた一日だった。
一緒に過ごすうちに健斗のこともいろいろわかってくる。
お父さんが日本人で、お母さんがイギリス人。
生まれは日本、育ったのは日本とイギリスが半分ずつ。ご両親は今ロンドンにいる。
お父さんは医者で、京都の国立大学を卒業している。だから健斗も同じところを選んだらしい。
国籍を日本にしたのは、将来的には日本に住みたいと思っているから。
「日本とイギリスを行ったり来たりしてたけど、じっくり住むようになって、やっぱり日本の方が合ってるなと思ったんだ」
祥は健斗と話しているうちに、肩の力が抜けてきた。男の人とこんなに親しく話したのは初めてだったが、健斗とは不思議な調和を感じた。
会うべくして会ったというか…
医者は苦手だと思っていたのに。こんな風に思える人と会ったのは初めてだ。