再会は甘い恋のはじまり…とはかぎりません!(おまけ追加しました)
目標が決まったからには、出来るだけ貯金をしておきたい。健斗と二人で生活を始めるなら、新しいものをたくさん買わなければいけなくなるだろう。健斗にだけ負担をかけるのは嫌だ。
そんな決意をすると、バイトも一層楽しくなった。今は、サンドイッチの他にも、バタートーストやサラダも作らせてもらえるようになっている。それも楽しみの一つだ。
「祥ちゃんはサンドイッチもバタートーストも上手に作れるようになったなぁ」
宮本さんが褒めてくれるのが嬉しい。
二十歳の目標に設定した『宮本さんに優しく』計画も今ならたやすくできそうだ。
先日、宮本さんは試作品ということで、『短足』と書いたTシャツを着てきた。
「コレ、ええと思ったんやけど、印刷屋が止めとけって言うんや。祥ちゃん、どう思う?」
印刷屋さんに激しく同意する。
意味もわからずこのTシャツを外国人が着たとしたら、国際問題に発展しかねない。
『某国との揉め事のきっかけは一枚のTシャツ』
そんな見出しのニュースに、宮本さんの写真が貼り付けられたら大変だ。
「『足』っていう字、シュッと払ってるところが人気出ると思うんやけどなぁ」
残念そうに宮本さんが言うので、祥も一緒に考えた。
「『足』という字を使いたいんですよね?」
「点々がついた字が一緒に組み合わさったら最高なんやけど。点々も人気やから」
『足』と『点々』ね。うーんと考える。
「『足汗』ってどうですか?」
意味はともかく、条件はクリアしている。蒸れそうで嫌だけど。
「おっ!いいがな。祥ちゃんセンスあるなー」
……いいんだ。
やっぱりアパレル(土産物)界のパイオニアの考えることはよくわからない。
「『満足』はどうですか?意味もいいし」
隣の席に座っていた健斗が口を挟んできた。
「おぉ!意味も考えてくれるとは、キミやっぱり賢いだけあるな」
宮本さんは大喜びだ。
健斗が祥を見て、どうだと言わんばかりに眉毛をキュッと上げる。
『宮本さんに優しく』計画を実行中だったのに。
そりゃ『足汗』より『満足』の方がいいに決まってる。
祥は健斗を軽く睨んだ後、ベーッと舌を出した。
くだらなくて、楽しくて、幸せな日々。こんな日がずっと続くと思っていた。