再会は甘い恋のはじまり…とはかぎりません!(おまけ追加しました)
バイトが終わり、家に着いたタイミングで健斗から連絡が来た。
『ちょっと話したいことがある。今から家に行っていい?』
今日は会う予定じゃなかったが、突然の訪問は大歓迎。
『いいよー』と連絡を返し、上機嫌で手早くシャワーを浴びた。
「え?ロンドンに戻るの?」
「一年だけだよ。向こうでも医者として働けるように準備だけしとけって親父が言うんだ。大学病院での研修が一年遅くなるけど、病院側の許可も出たので、一度ロンドンに戻ることにしたんだ」
祥はコーヒーを淹れる手を止めた。
ロンドンに帰る?
離れ離れになるっていうこと?
考えたこともなかったので、祥は動揺が隠せない。
そんな顔するなよ、と言って、健斗は祥の頬を優しくつねった。
「ちょうど祥が卒業するときに帰ってくるから、そこから新生活を始めればいい。一年なんてあっという間だ」
「……」
「毎日メールするし、できるだけスカイプで話もしよう。将来的には、祥にもロンドンで暮らしてみてほしいんだ。向こうのホテルで働くのは祥にとってもいい経験になるよ。その為には、俺が働けるようにしておかないと」
健斗は祥の髪をクシャッとかき混ぜた。
聞き分けてくれというように顔を覗かれると、祥も嫌とは言えない。
「…わかった。待ってる」
「いい子だ」
健斗はもう一度髪をかき混ぜると、優しく引き寄せキスをした。
健斗がケーキを買ってきてくれていたので、食べながら今日あった事を話す。
普段どおりのことなのに、イマイチ話が弾まない。
ケーキも祥のお気に入りの店のものだったが、いつものように美味しさを感じられない。
せっかく健斗が来てくれたのに。
ケーキまで持ってきてくれたのに。
いつもなら楽しいはずの時間が、ぼんやりとしたものになってしまった。