再会は甘い恋のはじまり…とはかぎりません!(おまけ追加しました)
健斗とは毎日メールのやり取りをしている。
桜が散り始めたこと、四年生の単位は前期だけで取り終わること、健斗が考案した『満足』Tシャツがすごく売れて宮本さんが喜んでいること。
些細なことを何でも報告する。返事もまめにくれるので、思ったよりも寂しさを感じなかった。
ロンドンとは時差が9時間ある。健斗のお昼の時間が、祥の夜9時前後の時間で、これがスカイプで話せる時間帯だった。
「やっほー」
画面の向こう側にいる健斗に元気に手を振る。
「相変わらず元気そうだな」
健斗は祥を見て笑っていた。
健斗は今、父親の友人でもある日本人医師の元で研修をしている。
日本人がロンドンで医者をしたいと言っても、受け入れ先の病院を探すのが難しい。
だから、ロンドンで働こうと思い立ったときに受け入れてもらえる病院のコネクション作りを頑張っているのだ。
健斗の頑張りを見ていると、祥も頑張ろうと思える。
「泉ホテルにエントリーシートを出したよ。他のホテルでは通過の連絡がきたところもあるから、適性検査を受けて、その後面接が始まるの」
「いよいよだな!頑張れよ」
「うん!」
祥は握りこぶしを作って、頑張るよーっと笑った。
「俺もこれからシフトに組み込まれることになったんだ。だからしばらくはスカイプはできなくなるかもしれない」
悪いな、というように健斗は眉を下げた。
「そうか…。残念だけど、わかった。健斗も頑張ってね」
祥が答えたその時、「健ちゃん、ランチの用意ができたよ」という女の子の声が聞こえた。
「わかった。今行くよ」
健斗は画面から目を離し、誰かに笑いかける。
「悪い。時間がなくなった。またメールする」
そう言うと、通信はプツンと途絶えた。
職場の昼休憩だと思っていたけれど違うのだろうか。
『健ちゃん』?
日本人の女の子がいるということだ。
モヤっとする気持ちで、祥は暗くなったパソコンの画面を見ていた。