再会は甘い恋のはじまり…とはかぎりません!(おまけ追加しました)

翌日、祥は泉ホテルに来ていた。真っすぐ前を見て、堂々と歩く。

妊娠しているという引け目で、今までの面接はオドオドしてしまっていた。
今はもう、当たって砕けるならそれでよし、という心境だ。

憧れの泉ホテルには、ちゃんと自分の熱意を伝えたい。
ここで働くことを目標に頑張ってきたのだから。

面接では、しっかりと自分をアピールできた。
これでダメなら悔いはないと思えるほどに。

「最後に何か言いたいことはありますか?」

きた!祥は小さく息を吐くと、面接官の顔をしっかりと見て話した。

「実は今妊娠しています。出産予定は十二月なので、来年の四月には三ヶ月になる子どもがいる予定です」

面接官はちょっと驚いた顔をして「そうですか」と言った。

あー。やっぱりだめか。

とぼとぼと会場を後にする。
威勢のいいことを言っていても、ダメと思うと気持ちは萎える。

ホテルを出たところで、振り返ってエントランスを見た。
豪華な中に落ち着いた雰囲気。
憧れの泉ホテル。

ここで働きたかったなぁ…

フーっとため息を吐いて、祥は歩き出した。

< 33 / 135 >

この作品をシェア

pagetop