再会は甘い恋のはじまり…とはかぎりません!(おまけ追加しました)
祥は喉がグッと詰まった。泣き声にならないように、「はい」と小さく答える。
「結婚の予定は?」
「ありません」
「そう。シングルマザーはうちにもいるわ。初めからっていう人はあなたが初めてだけど」
覚悟はあるのよね?と聞かれ、ありますっと強く答える。
「うちは託児部という部署がちゃんとあって、社内で子どもを預けられるようにしてるでしょ?だから、妊娠出産で辞める人はほとんどいないわ」
へーっという顔で祥が聞いていたので、知らなかったの?と呆れた顔をされた。
「子育て中の先輩ママが多いから相談に乗ってもらえるし、困った時には手を借りることもできる。みんな同じ経験をしてきてるから、順繰りに手を貸すようなシステムが出来上がっているの。あなたも子育てが一段落したら、ちゃんと次の人に手を貸してあげてね」
「はい!」
力強く答える祥に、藤島取締役は頷いてみせた。
「後日、人事部から連絡がいきます。託児のことで心配なことがあったら何でも質問してね。出産する病院の相談にものれるわよ」
あっ!まだ採用って通知がいってないのに、余計なこと言ってしもた、と藤島取締役はぺろりと舌を出した。
じゃあ四月にね、出産頑張ってね、痛いけど。
そう言葉を贈られて、祥は部屋を退出した。
歩いていると自然に涙がこぼれてくる。泉ホテルは、祥が憧れていた以上のホテルだった。
お腹を静かにさすってみる。
ごめんね、あなたにパパはいないけど、ママが一生懸命あなたを育てる。
だから、一緒に頑張っていこうね。
翌日、祥の元には、人事部から採用内定の知らせが届いた。