再会は甘い恋のはじまり…とはかぎりません!(おまけ追加しました)
チェックアウトの波が収まると、コンシェルジュカウンターも一息つく。
一緒に業務に当たっている先輩と今後のスケジュールを確認した。
「来週の『循環器学会シンポジウム』は、小林さんと浅野さんがチェックイン支援に回るのよね?」
「ハイ、ソウナンデス…」
どうしたの?嫌なの?と先輩は笑うが、祥の目下の悩みはコレなのだ。
この『循環器学会シンポジウム』は三日間の日程で行われ、二年に一度開催されているそうだ。
全国各地持ち回りで行われていて、今年は京都が当たっている。
泉ホテルはこのシンポジウムの参加者が泊る指定ホテルになっており、祥が小さな頃泉ホテルに泊まったのも、父がこれに出席したからなのだ。
シンポジウムの参加者のチェックインは特設カウンターで行うため、その支援に祥と麻季が割り当てられてしまった。
全国各地、海外からも多くの医者が集まってくる…。
祥にとっては地獄でしかない。
祥が医者嫌いだと知っている麻季に「仕事中に蕁麻疹がでたらどうしよう」と真剣に訴えたが、「塗り薬を持ってきとくわ」と軽く流されてしまった。
麻季は深い事情を知らないので軽く言うが、マジで蕁麻疹出ますから。
健斗との一件で祥の医者嫌いは拍車がかかった。
今では具合が悪い時に診てもらうことすら躊躇するほどだ。
つむぎを授かったことに恨みはない。
つむぎと二人で暮らしている今も、幸せだと胸を張って言える。
だけど、医者とはもう関わりたくない。金輪際、心の底から。
さらに今回はもう一つ嫌なことがある。
兄やなぜか父まで『循環器学会シンポジウム』に参加すると言い出したのだ。
みんなこのホテルに泊まるわけで…。
ある意味カオス?
来週のことを考えると、自然と大きなため息が漏れた。