再会は甘い恋のはじまり…とはかぎりません!(おまけ追加しました)
二階に上がり自分の部屋に入ってみる。綺麗に片づけられた部屋は、祥が出て行った時と変わらない。
ベッドがちゃんと整えられていて、すぐに使えるようになっていた。
祥が泊っていけるように母が準備してくれたのだろう。
さっきの母とのやり取りを思い出して、ちょっと胸が痛んだ。
家を出て駅に向かって歩いていると、「祥!」という声が聞こえた。
振り返ってみると、母が息を切らしながら追いかけてくる。
「これ、新幹線の中で食べなさい」
母はハアハアと苦しそうに息をしながら、紙袋を手渡した。
驚いた。母が走っている所なんて見たことがない。
「お母さん、走れるんだ」
失礼かもしれないが、本当にびっくりしたのだ。
「何十年ぶりかで走ったわ」
額の汗をぬぐいながら母も笑っていた。
「子どもを一人で産み育てるということは簡単なことじゃないわ。困ったことがあったら必ず連絡しなさい。お父さんが何て言おうと行くから」と母は真剣な顔で言った。
「ごめんね、祥。味方になれなくて」
母は涙でにじんだ眼を伏し目がちにしてそう言った。
「私こそ勝手なことをしてごめん」
自然にそう言えた。