再会は甘い恋のはじまり…とはかぎりません!(おまけ追加しました)
自転車をいつもの場所に停め、つむぎを降ろすと、つむぎは一目散にお店に向かって走って行った。
ドアベルがカランコロンと鳴る。
「ただいまー」
元気よく言って、つむぎは店の中に入っていく。
「つむちゃん、おかえり」
和子さんが跳びついてきたつむぎを抱きとめてくれ、
マスターもカウンターの向こうから、「おかえり」と笑った。
「遅くなったので、食べに来ちゃいました」
「そりゃ、たまには売り上げに貢献してもらわんとな」
「つむ、オムライスがいい!」
つむぎは子供用の椅子に座るとカウンターに身を乗り出すようにして、今日一日のことを報告している。
マスターは目を細めて、うんうんと話を聞いてくれていた。
「はーい、お待たせ」
和子さんがホカホカのオムライスを持ってきてくれる。つむぎに取り分けができるようにぼってりと大盛りだ。
マスターは「たまには売り上げに貢献してもらわんとな」と言うが、実際祥が食べに行くと気を使わせてしまう。オムライスは大盛りな上に、サービスでスープやフルーツもついてくる。
申し訳ないと思いつつも、ここに来ると心からホッとした。『珈琲』は祥にとって実家のようなものなのだ。
「祥ちゃん、お母さんから荷物届いてるよ」
「ありがとうございます」
和子さんがずっしりと重い段ボールを渡してくれた。
つむぎの服や野菜などが入っているんだろう。
そんなに送ってこなくていいよと言っているのに、こうやって母は何かにつけて荷物を送ってくれる。
あの再会の日を境に、祥と母の関係は変わった。
こんな風に食べ物を送ってくれたり、変わったことはない?と電話をくれたりする。
つむぎが生まれた時には、父を置いて一人で会いに来たので驚いた。
「お母さんも自分のしたいことは我慢しないですることにしたの」
そう言ってつむぎを嬉しそうに抱いていた。
オムライスと段ボールで元気回復。
祥はしみじみと幸せだなぁと感じたのだ。