再会は甘い恋のはじまり…とはかぎりません!(おまけ追加しました)

いつものお散歩道に見慣れない看板が出ている。

「私設図書館『わかたけ文庫』?」

いつも閉まっていたお屋敷の門が開いている。大きな日本家屋で、誰が住んでいるんだろうと不思議に思っていた家だ。

「入ってみようか?」とつむぎに聞くと、「ケンタくんの大冒険!」と大きな声が返ってきた。

つむぎが大好きな絵本『ケンタくんの大冒険』。
ケンタくんという男の子が知らない家に迷い込んで庭を探検するというお話だ。

不法侵入?なんて言っていたら童話は読めない。犬も猫も話す世界だ。人の家に潜入するぐらい可愛いもんだ。

ワクワクしているつむぎと一緒に門をくぐった。

「わあ!スゴイね」

見事な日本庭園があった。銀杏の木が群生し、竹林もある。
まるでお話の中に迷い込んだみたいで、二人でキレイと見惚れていた。

奥に進んでいくと、大きな家がある。
扉は解放されていて、『わかたけ文庫』という可愛い木の看板がぶら下げられていた。

恐る恐る入ってみると、『おくつをぬいであがってね』と書いてある。
言われるままに靴を脱いで上がり、「ごめんください」と言いながら、戸が開いている部屋に入ってみた。

「わー!」
つむぎが大きな声を出したので、慌てて口を押さえる。

「いらっしゃいませ。今は誰もいないので大丈夫ですよ」
笑いながら綺麗な女の人が声をかけてくれた。

つむぎが大きな声を出したくなる気持ちはわかる。そこにはたくさんの絵本があったのだ。

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