再会は甘い恋のはじまり…とはかぎりません!(おまけ追加しました)
『循環器学会シンポジウム』開催日前日…
ついにこの日がやってきた。
参加者の多くが泉ホテルに宿泊するとあって、ホテルにとっても大きなイベントだ。
シンポジウム関係者のチェックインは、混乱しないように通常よりも早い午後十二時からになっている。
宿泊客はシンポジウムの開催期間だけではなく、延長して泊る人も多い。
せっかく秋の京都に来ているのだ。ついでに観光も、と考える人がたくさんいてもおかしくない。
それぞれ延泊日数が違うので、何度もブリーフィングが行われ、間違いのないように確認が行われた。
特設のチェックインカウンターはエントランスに入ってすぐの所。
祥と麻季は朝からそこに配置されていて、準備に取り掛かっていた。
「はーーー」
何度目かわからないため息がもれる。
『ちょっと、大丈夫なの?』
隣に立つ麻季が周りに聞こえないように小さな声で問いかけてきた。
『大丈夫じゃない』
そう。本当に大丈夫じゃないのだ。
気分はだだ下がり。
『バカなこと言ってないで、しっかりしてよ!』
麻季は器用に、口を動かさずに祥を叱ってくる。
「はーーーーーーー」
これで最後と思いながら、ひときわ大きなため息を吐いた。
元々気の重いイベントだったが、さらに気の重くなることが追加された。
兄と父の他に、さらに兄の奥さんと、なぜか母まで来ることになったのだ。
何が悲しくて、家族全員が集まらねばならぬ。よりによって祥の職場で。
働いているところを家族に見られることほど嫌なことはない。授業参観じゃあるまいし。
祥の気持ちは床スレスレを飛んでいた。