再会は甘い恋のはじまり…とはかぎりません!(おまけ追加しました)
そんな祥に、さらにストレスをかける人たちがいる。
昼前に、フライングのお客様がやってくるのだ。
チェックインは十二時からと言っているのに!
なんてせっかちなんだ!これだから医者は!
特に医者だからということはない。チェックインの時間前にやってくるお客様は結構多い。
でも、祥の気持ちには医者専用のフィルターがあるので、さらにイライラが倍増するのだ。
チェックインの手続きを済ませても、まだ部屋には入れない。
「なんで入れないんだ」と不機嫌になるお客様をなだめつつ、ソファーに座って待っていただくようにご案内をする。
ロビーはチェックインをする人、部屋に入るのを待っている人などが入り乱れてざわざわとしていた。
「お待たせいたしました!お部屋の準備が整いましたので、ご案内いたします!」
宿泊係の声がして、人々が流れ始める。
人が少なくなるだけで、気持ちは楽になる。
ようやく息が深く吸える心地がした。
「祥!」
声がする方を振り向くと、兄がひらひらと手を振っていた。
げっ!そんなところから大声で名を呼ぶか?
祥は引き攣りながら、笑顔を作った。
「バカね!そんなことしたら、祥ちゃんが困るでしょっ」
横にいる義姉がバシッと兄を叩く。兄は「イテッ」と言いながら、苦笑いを浮かべていた。
義姉は悠然と微笑みながら、こちらに向かって歩いてくる。
祥と同じくらい背が高く、その上、背の高さ以上に顔が威圧的だ。
初めて会ったときは、某夢の国にいる魔女かと思った。
完璧な化粧に、真黒な服、ピンヒールのパンプス。
それはそれは堂々としていた。
祥は背が高いのが嫌で、目立たないようにするのが癖だが、義姉は自分の個性を遺憾なくアピールしている。
隣にいる兄は魔女の手下にしか見えない。多分周りの人はみんなそう思っているだろう。