再会は甘い恋のはじまり…とはかぎりません!(おまけ追加しました)
魔女(義姉)は優雅に微笑みながら祥の前に立った。
内心は怖さに怯えながらも、祥だって営業スマイルを絶やさない。
「チェックインお願いします。祥ちゃん、お久しぶりね」
「お義姉さん、お久しぶりです。兄がいつもお世話になっております」
定型どおりの挨拶を交わしたが、その後魔女は余裕のある態度で、フフンと笑った。
否定しないの!?
普通そこは「いえいえ、こちらこそ」では?
お世話されてる兄よ、しっかりしてくれ!
魔女の横にいる手下をチラッと見ると、ニコニコと笑っている。
これはダメだと思いながら、チェックインの手続きをした。
「三日間いるんだし、時間があったら一緒に食事でもしましょう」
そう言い残して、魔女は手下を連れて去っていく。
兄は最後までニコニコと笑っていた。なんとも残念な兄だ。
やれやれと思っていると、「祥」と小さな声で、声をかけられる。
訪問着を着て、上品に微笑む母だった。隣には口を一文字にした父が立っている。
「いつもお世話になっております。祥の母でございます」
母は丁寧に麻季に挨拶をする。
「今、お兄ちゃんたちが来たよ」
小声で言うと、うんうんと母は頷いた。
「後で連絡するわ。できたらみんなで食事でもしましょう。つむぎちゃんにも会わせてね」
母はこそっと言うと、また丁寧に頭を下げて、父と共に立ち去った。
兄とはまた違う感じだけど、父も一言も発しない。
何か言うことはないの?と疑問に思う。四年ぶりに会ったんだから。
まあ、祥も何も声をかけなかったけれど。
やっぱり職場で家族に会うなんて、ろくなもんじゃない。
どっと疲れが出るが、でもこれで難関は突破した。
あとは、見ず知らずの医者の大群に耐えるだけだ。
「祥の家族は個性がすごいわね」
麻季が感心したように言う。
「私もそう思う…」
遠い目で祥は答えた。
その後もお客様が途切れなく続き、二時近くなってようやく一息つけるようになった。
「すごいラッシュだったね」
「覚悟してたけど予想以上」
麻季とぼそぼそ言い合っていると、「チェックインお願いします」という落ち着いた声が聞こえた。