再会は甘い恋のはじまり…とはかぎりません!(おまけ追加しました)

    *

「おひさま、おひさま、らんらんらん」
つむぎは今日も機嫌よく歌を歌っている。

祥はなんの感情もわかないまま、機械的に足を動かしていた。
足に力は入らないけれど、優秀な自転車が『任せておけ』と言わんばかりに頑張ってくれる。
今日ほど電動自転車に感謝する日はないな、と思いながら、祥はチャリーンチャリーンと自転車をこいでいた。

あの後、なんとかロビーに戻り仕事を続けていたが、あまりにも顔色が悪かったらしく、マネージャーに帰宅を命じられた。

「祥、本当にイケメン医者がダメだったのね。ゆっくり休んで」

健斗のチェックインで具合が悪くなったので、麻季はそう思ったらしい。
麻季に心配されながら、夕方の早い時間に帰ることになった。

自転車をこぎながら、祥はボーっと考える。

世の中全ての人に問いたい。

別れたオトコに再会した時、ダメージが大きいのはどっち?
A・嫌そうな顔でチッと舌打ちされる。
B・相手が自分のことを全く覚えていない。

「Aかな」
「えー、Bじゃない?」
などと揉めている人たちに声を大にして言いたい。

圧倒的にBです。間違いありません。

嫌な顔をされるということは、相手の記憶の中に自分がいるということだ。悪い思い出の方が勝っていたとしても、それも一緒に過ごしてきた日々の証。

でも、覚えていないっていうのは、記憶から抹消されているということだ。
これほどみじめなことはない。自分が覚えているならなおさら。

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