再会は甘い恋のはじまり…とはかぎりません!(おまけ追加しました)
「もう大丈夫なの?」
ロッカーの扉を閉めながら、麻季が聞いた。
「うん、ごめんね。昨日はちょっと寝不足だったの」
それならいいけど、と麻季は少しホッとしたような顔をした。
「つむちゃんもいるし、ゆっくり休めないんじゃない?私でよければ預かるよ」
麻季はつむぎを姪のように可愛がってくれる。
どうしても外せない用事のときなどは、預ってくれるのだ。
心が弱っているときに、この申し出は本当に嬉しかった。
「ありがとう、麻季」
ギューッと抱きつくと、「苦しいでしょ。自分のスペック考えな」と叱られた。
今日は麻季と通常通りコンシェルジュカウンターで業務だ。
シンポジウムは今日が初日で、ホテルもお客様の出入りが激しい。きっとコンシェルジュカウンターにも多くの人が来る。
バタバタしているとミスも多くなりがちなので、対応には細心の注意が必要だ。
気合を入れて、ロビーに向かった。
思ったとおり、ホテル内は雑然としていて人が多い。泉ホテルは落ち着いた雰囲気が売りのホテルなのだが、残念ながら今はそういうわけにはいかないようだ。
でも、もうすぐ来る十一月の三連休もこんな感じになるのだ。
予行練習。予行練習。
祥は、テキパキと仕事をこなしていた。
コンシェルジュカウンターからはロビーが広く見渡せる。
こちらにやってくるお客様が見えるので、迎える準備を整えられるのはいい点なのだが、今回ばかりはそれが仇になった。
健斗が真っすぐこちらに向かってくるのが見えたのだ。祥は心の中で大きなため息を吐いた。