再会は甘い恋のはじまり…とはかぎりません!(おまけ追加しました)

健斗よりは少し濃いめだが、つむぎの髪も目もベージュだ。初めて会った人には「ハーフ?それともクォーター?」と必ず聞かれる。

でも髪の色だけじゃない。今回、健斗に再会して、つむぎがいかに健斗に似ているかを思い知った。

目鼻立ちや顔の雰囲気が明らかに似ている。

「田中様は6週間の滞在予定だし、ゆっくり考えてみたら?」

麻季はそう言って締めくくった。祥の返事を急かすことはない。

麻季には出会って間もないころに、「学生時代に子どもを授かったが、相手の人は実家に戻ったきり連絡がつかなくなった」と説明をした。すると、麻季は「そう」と言っただけで、それ以来何も聞かれたことがない。

こちらの事情に深く首を突っ込んでこない麻季のスタンスが好きだ。
それだけに、今回の助言は心に響いた。

何と言おうか迷っていると、麻季が何事もなかったかのように話を変えた。
こういうところも麻季のいい所だとつくづく思う。

「月曜日から二連休取ってたけど、どこか行くの?」
「ううん。『珈琲』のお手伝い。和子さんが名古屋に行くんだって」
「名古屋?」
「うん。ラン君のライブ」
「あー」

麻季がプッと吹き出した。

イケメン好きの和子さんは、いま娘さんとお孫さんの三人で、某アイドルグループに嵌っている。
そのアイドルグループが全国ライブツアーの真っ最中で、名古屋まで追っかけて行くのだ。
和子さんには、ラン君という推しがいて、最近はラン君のイメージカラーの黄色ばかりを身につけている。もちろんモールで飾ったうちわも手作りして、大張り切りだ。

マスターはそんな和子さんに呆れ果て、名古屋のライブに行く行かないで大いに揉めた。そこで、祥がお店を手伝うからと仲裁したのだ。

「二日間がっつり手伝うなら、支配人に言っておいた方がいいんじゃない?誰かに見られて、『泉ホテルのコンシェルジュが副業してる』なんて言ってこられたら、ややこしいことになるよ」
「それは困る」

「ありがとね、麻季」
いろいろと。

麻季は全てわかってるというように、笑顔で頷いた。

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