再会は甘い恋のはじまり…とはかぎりません!(おまけ追加しました)
「つむ、おじいちゃんだよ」
「おじいちゃん?つむのおじいちゃん?」
そうですよ、と母は父のところにつむぎを連れて行った。
つむぎは興味津々といった感じでマジマジと父を見るが、父はどう接していいかわからない様子で目を泳がせている。
珍しい父の姿をもう少し見ていたい気もするが、助け舟を出すことにした。
「つむ、ご挨拶は?」
「こばやしつむぎです!さんさいです」
父はそっとつむぎの頭を撫で、「かしこそうな子だ」と微笑みかけた。
「じゃあ、移動しようか」と兄が言い、みんな動き出す。
つむぎは片手を母と繋ぎ、もう一方の手で父の手を取った。
「おじいちゃん、いこう」
父は驚いたような顔をしたが、「手をつないでくれるのか」と言って、嬉しそうに立ち上がった。
孫は可愛いというけれど、父も例外ではなかったようだ。
祥は父が微笑んでいるところなんて初めて見た気がした。
「親父、嬉しそうだな」
「びっくりだね」
兄がクスクス笑いながら言うので、祥もこそっと笑った。
食事の間も、つむぎは母と父の間に座りご機嫌だ。
父は、祥と兄の前だということを忘れてしまったように、デレデレとつむぎを可愛がった。
「おじいちゃんのおうちにいく」という約束が取り交わされ、指切りげんまんをしているのを見たときには、驚きのあまり箸を落としそうになった。
「お義父様も人の子だったのね」
しみじみと義姉が言うので、余計におかしかった。
「いい子に育っているじゃないか」
帰り際に父がボソッと言った。
「当たり前よ。私の娘だもの」
祥は照れくさくて強がってみせる。
父に褒められたことなどなかったので、「ありがとう」と素直に返事ができないのだ。でも、つむぎのことを褒めてもらえるのが何よりも嬉しい。
「頑固なところは似ないといいが」
「それはお父さん譲りだから」
「そうか。そうだな…」
柔らかい表情で微笑む父とこんな風に話す日がくるなんて、想像したこともなかった。
『子はかすがい』というけれど、それは夫婦間に限ることではないらしい。
間を詰める一歩はつむぎのおかげで、両方から踏み出せた。
「まとまった休みが取れたら、つむぎを連れて帰ってこい」
「うん、そうする」
「おじいちゃん、早く!」
急かすつむぎの声がして、父はつむぎの元に向かった。