再会は甘い恋のはじまり…とはかぎりません!(おまけ追加しました)
色素の薄い髪、眼鏡の奥に隠されているが眼も薄いベージュだ。
ずっと外していたのに、なぜ今だけ眼鏡にしているのだろう。
マスターは「いらっしゃい」と声をかけたが、健斗の姿を見て目を見開いた。
みるみるうちに険しい顔になっていくので、祥は慌てて「マスター!」と声をかけ、頭を微かに横に振った。
「でも…」
マスターが言おうとしていることを、祥はもう一度首を振って遮る。
マスターは口をグッと結び、渋い顔をした。
健斗は店内を軽く見まわすと、窓際の席に座った。
あの頃いつも座っていた席に、昔のままの様子で。
祥は水とおしぼりを持って健斗の席に行った。
「いらっしゃいませ」
「泉ホテルは副業が可能なのか?」
「副業ではありません。ただの手伝いです。ここにはどうして?」
「キミの相棒のコンシェルジュが紹介してくれた。美味しいコーヒーが飲めるのはここだと」
麻季!!余計なことを!
ペロッと舌を出している麻季の顔が目に浮かび、心の中で詰る。
健斗は眺めていたメニューから顔をあげると、「ブレンドとサンドイッチを」と言った。
祥が幾度となく聞いたオーダーだ。
その瞬間、祥の胸には切なさと悲しさが入り混じったような、何とも言えない気持ちが押し寄せてきた。
この人は一体何を考えているのだろう。
「少々お待ち下さい」
声が震えないようにするのが精一杯だ。足早にカウンターに戻り、マスターにオーダーを通した。