再会は甘い恋のはじまり…とはかぎりません!(おまけ追加しました)
「祥ちゃん…」
マスターも複雑な顔をしていたが、渋々コーヒーの準備に取り掛かった。
祥はサンドイッチを作る。
玉子を手早く焼き、軽くトーストしたパン・ド・ミにキュウリ、ハムと一緒に挟む。和子さん特製のソースを塗ると出来上がり。
健斗のために何度作ったことか。
祥は目を瞬かせてグッと堪えた。
食べやすいようにカットして、コーヒーと共に運ぶ。
「お待たせしました」
健斗はコーヒーとサンドイッチをしばらく見ていたが、コーヒーに口をつけると何かを確認するように目を閉じた。
次にサンドイッチを手に取り、一口齧るとピタッと固まった。
「この味…」
祥の方を振り返って何か言おうとしたとき、ドアベルがカランコロンと鳴り、いま最も来てほしくない人が入ってきた。
「おっ!祥ちゃん頑張ってるな」
祥がいることを知ってやって来た、ご機嫌な様子の宮本さんだ。
祥はギョッとしてマスターを見た。
宮本さんの空気の読めなさは一級品。今この瞬間だけは、ここにいてもらっては絶対に困る。
「おい!今日はこっちに座れ」
勘のいいマスターはちゃんと祥の思いを酌んでくれて、慌ててカウンターを指さし、宮本さんがいつもの席に座らないように声をかけた。
「なんでや。いつもの席、空いてるやろ」
怪訝な顔をした宮本さんが店内を見まわし、健斗の所で目が留まった。