再会は甘い恋のはじまり…とはかぎりません!(おまけ追加しました)
祥はというと、『絶望』という字を顔に張り付けて立っていた。
宮本さんの背中とは対照的な『絶望』だ。
マスターも苦虫を噛み潰したような顔をしていて、宮本さんは「ん?どうかした?」とマスターと祥の顔を交互に見ていた。
健斗は目をつぶり、頭痛をこらえるように額に手を当てている。
店内に不穏な空気が流れたとき、つむぎが目をこすりながら奥から出て来た。
「ママ―、起きた」
「おっ!つむちゃんもいてたんか。おっちゃんが遊んだろ。こっちおいで」
つむぎは一瞬キョトンとしたが、宮本さんの『おいでおいで』の仕草を見てそちらに向かった。
「つむ!待って」
つむぎの髪は窓から差し込む陽射しで、金色に輝いている。
窓際に座る健斗と同じように…
健斗は額から手を離し、ゆっくりと眼を開け、つむぎを見た。
つむぎも健斗を不思議そうに見たが、「おじちゃんのかみ、つむとおなじね!」と笑いかけた。
「つむ!」
祥はつむぎに駆け寄り、サッと抱き上げた。
「失礼しました」
そう言うと、足早にバックヤードに逃げ込む。
つむぎを抱く手に力が入り、「ママ、いたい」とつむぎが泣きそうな声を出した。
健斗につむぎを見られてしまった。
予想外の事の成り行きに、祥は動揺が隠せない。
「ママ?」
「大丈夫。なんでもないよ」
自分自身に言い聞かせながら、祥はつむぎを抱きしめていた。