再会は甘い恋のはじまり…とはかぎりません!(おまけ追加しました)
「ママー、きょうもマスターのところにいくの?」
「そうだよ」
祥はつむぎの柔らかい髪の毛を三つ編みにしながら答えた。
昨日は結局、健斗から逃げたままになってしまった。
「帰ったよ」とマスターに声をかけられるまで、バックヤードに籠っていたのだ。
「一度ちゃんと話した方がいい。彼にも何か事情があるみたいだし」
マスターは兄と同じことを言った。
確かに、健斗の様子はおかしかった。宮本さんのTシャツも覚えていなかったようだし。
忘れてしまおう、という決意が少し揺らぐ。
この四年間で健斗に何があったんだろう。
「和子たちは五時頃帰ってくるらしい。それまでいてもらってもええやろか?」
お店に入るとマスターがすまなそうに聞いてきた。
「もちろんです。今日は一時からの公演だって言ってましたもんね」
「ラン君かリン君か知らんけど、アホらしいこっちゃ」
マスターはぶりぶり怒りながら今日最初のコーヒーを淹れて、祥に飲ませてくれた。
二日目の今日もお客様との同窓会は続く。
来なくていいですと言ったのに、シマさん&アオさんはいつものワイルドかつ国籍不明仕様でやってくるし、宮本さんも珍しくしょぼんとした様子で現れた。
「なんか余計なことをしてしまったようで…」
「とんでもない!」
もちろん空気の読めなさを痛感したのは事実。つむぎをよく知っているのに、健斗を見て何も思わないところが宮本さんの凄さだ。さすがとしか言いようがない。
でも祥の勝手な事情に巻き込んでしまって、申し訳ないのはこちらの方だ。
お詫びの印に、今度宮本Tシャツを定価で買おうと心に決めた。