再会は甘い恋のはじまり…とはかぎりません!(おまけ追加しました)

喫茶店は夕方からまた混雑する。
祥がパタパタと店内を走り回っていると、和子さん御一行が賑やかに帰ってきた。

三人ともそれぞれの推しのメンバーカラーの服を着ているので、見ているこちらは目がチカチカする。

みんなグッズを大量に買い込んで上機嫌なご様子だ。

「祥ちゃんありがとねー」と渡されたお土産は、ラン君の写真付きマグカップとタオル。
マスターの機嫌は急降下で、祥は紛争に巻き込まれる前にわかたけ文庫へと向かった。


十月も半ばになると、多くの店の店先には、カボチャやオバケの飾り物が連なる。
どこに行ってもハロウィン一色だ。

祥はこの時期になるといつも憂鬱になる。どうしても健斗のことを思い出すのだ。

初デートの約束をしたハロウィン。
記憶抹消を心に決めても、こうしてオバケの飾りを見るだけで思い出してしまう。

忘れるまでの道のりはなかなか遠そうだった。

わかたけ文庫も玄関先から廊下までかわいいオバケの飾りでいっぱいだが、場所柄これは仕方ない。

部屋の前に置かれているオススメ図書もオバケの本だし。

なるべく見ないようにしながら部屋に入ったところで、祥はピタッと動きを止めた。

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