再会は甘い恋のはじまり…とはかぎりません!(おまけ追加しました)
部屋の隅にあるソファに健斗がいたのだ。
背もたれに身を任せ、くつろいだ様子で本を読んでいる。
その膝の上ではつむぎが丸くなって眠っていた。健斗のコートを着せられて。
祥は息を呑んで、その様子を見つめた。
つむぎには、眠くなると祥の膝に乗ってきて丸まって眠る癖があるのだ。
ただそれは祥にだけすることで、恵子先生や和子さんの二人にさえしない。
〝祥にだけ〟っていうところが堪らなく可愛い。親にだけ見せる無防備な愛らしい姿だ。
でも、今、つむぎは健斗の膝で眠っていた。
祥にとってはあまりにも衝撃的な光景だった。
祥に気づいた莉子さんが慌てたように近づいてくる。
「あっ!祥ちゃんいらっしゃい。ごめんねー。たまたま夫の同僚の先生が来てたんだけど、つむぎちゃんと面識があったのかな?二人で嬉しそうに絵本を読んでたの。そしたら眠くなったみたいで、先生の膝に乗って眠ってしまったのよ」
莉子さんも、健斗とつむぎを見て何か思うところがあったようで、勝手なことをしてごめんね、と申し訳なさそうにしていた。
健斗が祥に気づき、まっすぐこちらの方を見た。
健斗もおそらくつむぎのことで言いたいことがあるだろう。
祥は小さく息を吐くと、健斗の方に歩み寄った。
「娘がご迷惑をおかけしました。申し訳ございません」
「いや。かまわない」
祥はつむぎを抱き上げて、「つむ、帰るよ」と声をかけた。
つむぎは寝ぼけたように「ママ?」と言い、祥の首に手を回してまた目を閉じた。
「一度話をしたいんだが…」
健斗は当然そう言うであろうと思うことを口にした。
「わかりました。また日を改めて」
祥は健斗から視線を外して、小さく返事をした。