再会は甘い恋のはじまり…とはかぎりません!(おまけ追加しました)
翌日、つむぎの熱は微熱まで下がっていた。
気だるそうにしているが、眼もちゃんと開いている。
「ママはお仕事に行かないといけないんだけど、お留守番できる?」
「ここでおるすばんするの?」
「そう」
つむぎは不思議そうに周りを見回した。
ここに来て三日目だが、熱でよくわからなかったんだろう。ここはどこ?という感じだ。
持ってきていたおもちゃや絵本を見せる。
「いい子で待てる?」
「おじちゃんはいるの?」
つむぎは健斗に直接聞いた。
「ああ。だから一緒にお留守番しよう」
健斗がつむぎの頭を優しく撫でた。
「わかった!おるすばんする」
「いい子だ」
健斗がつむぎの髪をクシャッとかき混ぜた。
「じゃあ、ママ行ってくるね。お世話をおかけしますが、よろしくお願いします」
祥は健斗に頭を下げると、足早に部屋を出た。
逃げるようにバックヤードに入ると、壁にもたれ大きく息を吐く。
やはり全部忘れ去ることなんてできない。
健斗とつむぎのやり取りを見ただけで、すぐに昔を思い出してしまうのだから。
ねぇ、私もいい子で待っていると約束したのに、どうして忘れてしまったの?
切なさが再び祥を襲った。
もうすぐ健斗はロンドンに帰る。
そのときにも、また空虚な気持ちになるのだろうか。
祥は自分を抱きしめた。
ダメだ、このままでは。
昔のことをはっきりさせない限り祥は前に進めない。
ちゃんと話をしよう。
祥は決意を固めて歩き出した。