再会は甘い恋のはじまり…とはかぎりません!(おまけ追加しました)
祥が部屋に戻ると、ちょうど食事がセッティングされているところだった。
大人用のディナー二つとその間に置かれたお子様ランチ。
健斗とつむぎはもう席についていて、つむぎは嬉しそうに、ケチャップライスに立つ旗を健斗に見せていた。
微笑ましい父親と娘の図。
そこに祥が加わると、他人の目からは家族三人の食事の光景に見えるのだろうか。
憧れていたわけではないけれど、想像したことはある。
健斗と祥と、その間にいるつむぎを。
つむぎは本当に嬉しそうで、苛立つのも馬鹿馬鹿しくなった。
いつか「あの時のおじちゃんは、つむのお父さんだったんだよ」と伝える日がくるかもしれない。
そう思うと胸が痛むが、今はつむぎに楽しい思い出を作らせてやりたい。ただそれだけだ。
寝るときも、約束通り健斗はつむぎを寝かしつけてくれた。
はしゃぐつむぎの声がベッドルームから聞こえていたが、それもやがて静かになる。
祥が備え付けのコーヒーメーカーでコーヒーを淹れたとき、健斗がそっと部屋を出て来た。
「ありがとうございました」
祥はリビングテーブルにコーヒーを置き、そのままソファーに座る。
健斗も向かいに腰を下ろした。
「慣れない子守でお疲れになったのでは?」
「いや、そんなことはない。子どもの患者を診ることもあるから、子どもが不慣れということもないんだ」
健斗はコーヒーカップを持ちあげ、温もりを確認するように手で覆う。
しばらくの静寂のあと、静かに切り出した。
「キミと話がしたいと言ったが、その前に俺の話を聞いてほしい」
そう言って、健斗は自分の身に起きた四年前の事故のことを話しだした。