男装獣師と妖獣ノエル 2~このたび第三騎士団の専属獣師になりました~
 アビードには、町の周囲三ヶ所に馬車専用の広い停車場が設けられている。そこには御者が休むための宿も設けられており、荷物を降ろす他は、町内に馬車を乗り入れる事は禁止されていた。

 メインとなる表通りの道は広く造られているものの、各地から集まった商人のテント店や簡易屋台が所狭しと立ち並び、そこを多くの人々が往復して狭く感じた。

 広々とした土地に対して、住民の少ないホノワ村では絶対に見られないような光景である。ラビは、ノエルと共に歩きながら、しばし見慣れない古風な雰囲気のその町を散策した。秋先の日差しが地面に照り返し、ローブの中が少し暑く感じた。

「夕方までこの調子だったら、途中でローブ置いてこようかな……」
『乾いた大地に囲まれているから、陽が沈むと地上の熱が引くのも早い。夕方には少し肌寒くなっているだろうから、ローブは着とけ』


 その時、後方で小さな悲鳴が複数聞こえてきた。
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