男装獣師と妖獣ノエル 2~このたび第三騎士団の専属獣師になりました~
 ラビは、屋上にしっかり結ばれている洗濯物干しの太いロープの結び目を確かめると、ノエルとほぼ同時に躊躇なく宙へと躍り出た。ロープにかかった洗濯物越しにロープを掴んだ直後、勢いよく下降が開始され、次々に洗濯物を巻き込みながらロープを下る。

 五階建ての屋上から伸びるロープを伝って、地上に向かってくるラビに気付いた人々が、驚いたように指を向けて騒ぎだした。

 ノエルは、体重を感じさせない優雅な跳躍で、建物の間に張られたロープを器用に踏み台にしながらラビを追った。彼にとってそれは、彼女がまだ幼かった頃にあった森の特訓で見慣れた光景でもあったので、何かあればいつでも飛びだせる距離を保っていた。

 ラビは進行方向を変えるため、途中で近くの洗濯物のロープへ飛び移った。女性達が見ていられないとばかりに「危ないッ」と悲鳴を上げ、男達が「なんて危険なことをするんだあの子供は!」と叫ぶ。
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