男装獣師と妖獣ノエル 2~このたび第三騎士団の専属獣師になりました~
 つか、また今も、言われるまで頭から抜けてたわ。

 上司であるセドリックやユリシスからは、女性であると知った一件に関しては、口外しないようにと指示されていた。しばらくの間は、少年であると勘違いさせたままでいくらしい。

 ラビの本気で男の子にしか見えない外見や乱暴さと、威嚇するように強気で挑んでくる際の口の悪さは、もはや女という雰囲気が微塵にもない。誰かが暴露しない限りは、他の騎士達にもバレない気もしている。

「素直に話してる時は、ちらっと可愛くも見えるんだけどな」

 多分、そっちが素の性格のような気はする。年長者のヴァンは、個人的に思うところもあって、つい青い空を見上げて一人そう呟いた。

 金髪金目という立場で一人生きて来たらしいから、ずっとそばにいてくれた『他人には見えない人の言葉を話す黒大狼の親友』を見本に、強くなろうと気を張っている節もあるのでは――と、中年に片足を突っ込んだ身としては考えてしまう。
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