男装獣師と妖獣ノエル 2~このたび第三騎士団の専属獣師になりました~
 王宮騎士団の総団長というのは、簡単にいえば騎士をとりまとめるトップである。護衛騎士、近衛騎士隊のみならず国の軍部を統括する役割も担っており、その執務室は王宮内の管理された一角に存在していた。

 出入りする人間や人数に規制があるとの事で、一旦ヴァン達を近くで待機させ、ラビはセドリットとユリシスと共に、ルーファスが待つ総団長執務室がある廊下を進んだ。そこは、先程まで歩いていた廊下とは打って変わり、人の行き来が全くなくて静まり返っている。

 廊下だけでなく天井や壁、窓ガラスの隅々まで磨き上げられており、固い床にセドリック達の軍靴があたってコツコツと音を立てた。窓が閉め切られているせいで、廊下は閉鎖的な空間に仕上がっているため慣れない独特の静寂が満ち、そこに三人分の足音が鈍く響き渡る。

 王宮というのは、随分と金がかかっているところらしい。

 人混みを抜けた事で緊張を解いたラビは、セドリックとユリシスの前に出て、好奇心から視線を忙しなく辺りに向けていた。本来は別荘となっているホノワ村の伯爵邸の他は、立派な建物も知らないので、支柱だけでなく廊下の天井にまで装飾がされているのには驚いた。
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