男装獣師と妖獣ノエル 2~このたび第三騎士団の専属獣師になりました~
「つまり、たった一人ずつしかいないの?」

 でも、それがいなくなってしまったら、どうなるんだろう。

 ラビは、つい考えてしまった。人間の場合、家業を継ぐのは子供や弟子だ。この世界に生きる動物だって、子を残して脈々と存在と血が受け継がれているというのに、妖獣は違うのだろうか?

 顔に出る彼女の横顔からそれを察し、ノエルは話さなければ良かったな、と少しだけ罰が悪そうに視線をそらした。

『……そいつらだって子は残せる。番(つがい)となる相手と同じ姿になり、自分がいなくなった後のための後継者を作るから、たった一つというその存在が絶える事はないように出来てんだ』
「夫婦になったら変身するの? どうして?」

 純粋に心から不思議に思って尋ねられ、ノエルはしばし黙りこんだ。

『人間も、人間という種族以外とは結婚しないだろ。それとおんなじだ』

 長い間を置いた後、彼はそうまとめると、そこから論点をそらすように仕方なくもう少しだけ話を続けた。
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