男装獣師と妖獣ノエル 2~このたび第三騎士団の専属獣師になりました~
 先程聞いたヴァンの話からすると、ユリシスも普段はあまり酒を飲まないタイプであるらしい。一杯目のビールを一気飲みしたセドリックを見て、いつもより多めに口にした、という事を言っていた気がする――とラビは思い返した。

「いつも早めに寝ているからって、部下に任せて就寝っていうのも、どうかと思うんだけどねぇ」
『こいつも、人がいる間は普通に話していたらしいからな。それを見て大丈夫だと判断したのか、もしくは普段から飲まねぇっていう眼鏡野郎自身が、こいつ以上に酒がめちゃくちゃ弱いってオチだったら、笑えるけどな』

 ノエルは、半ば軽い冗談のように口にした直後、ラビと共に沈黙した。

 何故か、アルコールが入っているとも思えないキビキビとした様子で、先に就寝致しますからと告げて部屋に戻っていくユリシスの光景が、全く違和感なく想像された。なんだか、可能性としては現実的にあり得るような気がする。

 よし、忘れよう。オレらは何も想像しなかった。
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