男装獣師と妖獣ノエル 2~このたび第三騎士団の専属獣師になりました~
「ノエル、起きてたの?」
『まぁ、一応な』

 そう言いながら、ノエルがチラリと室内を覗きこんだ。

『行動予測を裏切らないというか……。音で状況はなんとなく察したが、全然疑われていないってのも、ここまでくると哀れだよなぁ…………』
「なにが?」
『あ~っと……、なんでもねぇよ』

 認めてはいるが釈然としない気持ちもあって、ノエルは結局、中立の立場でラビの後を付いていったのだった。

             ※※※
 
 二度目の就寝は、夢も見ないくらいぐっすりだった。

 スッキリと目が覚めた朝、ラビは支度を整えて、ノエルと共に宿の一階へと降りた。擦れ違う途中で帽子から覗く金髪に気付いて、端に寄った人が譲った廊下や階段を、身体の大きなノエルが悠々と尻尾を揺らせて歩いた。

 一階の開けたフロア兼食堂スペースには、ローブやターバンを巻いた数人の客達が、それぞれ椅子に腰かけて寛いでいた。しかし、ラビの金髪に遅れて気付くと「さて、そろそろ行くか」とわざとらしく口にして、そそくさと出て行った。
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