男装獣師と妖獣ノエル 2~このたび第三騎士団の専属獣師になりました~
 物知りなノエルに感心しつつ、ラビは足場に転がっている、建物の一部だった物らしき瓦礫に目を留めた。幅の広い通路の先を見てみると、柱が半分ほど倒壊している箇所もあった。

 高い天井の穴から差しこむ太陽の光が、いくつもの筋になってこぼれ落ちている。その風景は外からざっと見た時に受けた、きちんとした建物の印象が変わるほど、年月を経て荒れてしまっているという実感も湧いた。

 ラビと同じように、通路の様子を観察していた一同の中で、テトが思い付くままに口を開いた。

「でも、俺が知っている古い遺跡とかに比べると、随分キレイに残っている感じもするけどな。かなり古い時代の物だっていう印象も、そんなにないっていうか」
「歩くだけの衝撃で、崩れてしまう通路もありますからね」

 ユリシスが、銀縁眼鏡のツルの部分を押し上げ、経験からそう意見する。

 すると、ノエルが『こっちも同じだと思うけどな』と言った。

『多くの人間が同時に出入り出来るよう、正面部分だけが頑丈に作られているだけだろうと思うぜ? 地下が何層もあるような広間だと、どうしても床が弱くなる』

 つまり進むほど、遺跡の内部は崩れている恐れがある。ほとんどの調査チームが途中で逃げ帰っているので、ここから先は、本当に未知の領域だった。

「これだけの規模だと、デカい地下空間もありそうだしなぁ……」

 ジンが、ノエルが想定している懸念内容を察して、そう呟いた。
< 253 / 398 >

この作品をシェア

pagetop