男装獣師と妖獣ノエル 2~このたび第三騎士団の専属獣師になりました~
 そう言って、彼が当時を思い出すように、指折り上げ始めた。

『魔力を供給させた妖獣同士を、ぶつかり合わせて勝つか。掛けられている術の魔力を上回る強さで解くか。もしくは術具自体を屈服させて、主人である事を認めさせる』
『通常なら、その三つの形式が代表的な方法だが、どれも無理だな』

 ノエルが間髪入れず却下し、ほんの数秒ほど熟考した。よく分からないでいるラビが、小首を傾げて様子を見守っている視線を横顔に受け止めつつ、ふとトーリに提案を返す。

『術が発動して実体化しているって事は、『取りこんでいる』というよりは『所持している』状態じゃないか? それなら、そのまま術具から切り離せるんじゃないかと思うんだが、実際のところ、そいつはどんな感じなんだ?』

 問われたトーリが、それは盲点だった、と目を丸くした。ただの獣師でも勝算の可能性がある、という目をラビに向け、それから今度は真面目に思い出しにかかる。
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