男装獣師と妖獣ノエル 2~このたび第三騎士団の専属獣師になりました~
 ボスが出てきた事で、じりじりと距離を計っているかのようにも見えるが、蛇達はただ与えられた役目に従って動いているだけだ。生物としての意思は持っていないという事は、互いの存在も認識していないのかもしれない。

 ベック達が「よく分からねぇ……」とぼやいて、緊張疲れのような表情を浮かべた。自分達なりに簡単に解釈し、「つまりここから出たら、また蛇が噛み付いてくるって事か」と兄弟同士の理解を確かめ合う。

 術具を取る事において、蛇の大群は考えて妨害するような行動は起こしてこない。けれど、だからといって、状況の厳しさは変わらないでいた。

「結局のところ、俺らが動き出した時点で、この蛇共も動くってわけだろ。一体ずつなら敵じゃないが、この数じゃ圧倒的にこっちが不利だ」

 ヴァンが、自分達の周りを取り囲んで覆い尽くしている蛇の群れの様子を、じっくり見つめたまま、ここにいる全員の意見を代表するように口を開いた。
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