男装獣師と妖獣ノエル 2~このたび第三騎士団の専属獣師になりました~
 ラビは「そうなんだね」と、少し残念に思って答えた。他の人には、この星のような白銀の輝きの美しさが見えないのは、勿体ない気がした。

 原理はよく分からないけれど、氷狼の件であった『月の石』と同じなのだろう。あれも自分には、色がハッキリ違って見えていたのに、皆にとっては同じ色をしたただの鉱石だった。後でジン達にチラリと話を聞いて、確認は取れていた。

 そう思い返したところで、ふと、首飾りに対して一つの疑問を覚えた。今もこうして遺跡にあるままだけれど、そもそも最初に運び出していたのなら、いくつもの術が発動して『砂の亡霊』と騒がれる事も、なかったのではないだろうか?

「トーリは、後継者がいなかったから持ち出せなかった、って言っていたよね? 術が発動してしまう前なのに、運ぶ事が出来なかったの?」
『持ち主がいて、制御している状態であれば出来ただろうが、強い魔力を宿した術具は耐性のない人間にとって毒になる。そのうえ、こいつは神殿内で次の持ち主を待つための術もかかっているみたいだな。だから、それを解けるだけの力を持った人間もいなくて、運び出す事が出来なかったんだろう』
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